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2015年6月 3日 (水)

書評①:強烈な自由への希求と不安


「自由へのスパイラル・ダンス」(洪信子著、兪澄子訳、フィルムアート社)

 「自分探し」という言葉がもてはやされるよう
になって久しい。しかし、人が宿命的にまとわされ
る幾重ものエゴの層を一枚一枚はぎとっていき、
自分の「本質」と呼べるようなものを体得しよう
とする作業が、ときに命すら奪われかねない実存
的な危機と葛藤(かっとう)を伴うものだというこ
とを、これだけあからさまに著者自身の言葉で体
験的に解きあかしてくれる本は少ない。
 封建制のしきたりがいまだに強く残る韓国の片
田舎で生まれ育った著者は、二十代の後半、自由
をもとめてニューヨークに旅立ち、八年間の舞踏
家としての鍛錬の末、はなばなしいデビューを飾
る。
 しかし、前衛舞踏家としての名声は彼女を真に
満足させるにはいたらず、人生の意味を解明すべ
く、すべてを捨てて彼女はインドへと旅立ってい
く。彼女の旅は単に「俗」を捨てて「聖」に向か
う巡礼の旅ではなく「聖」と「俗」との往復運動
である。そこに私は現代性を見る。
 とくにインドでのラジニーシやニサガダタ・マ
ハラジといった精神的な師を通して、東洋的な
「無我」の境地に「生きる」ことや「踊る」ことの
神髄を見いだした彼女が、ふたたび世俗に戻り、
結婚して子どもを産むくだりは、世俗にまぎれて
暮らしている読者には興味深いものがある。
 本書は韓国でベストセラーになったと伝えられ
ているが、それは急速な近代化を推し進めた韓国
人の魂の底で進行しているにちがいない、強烈な
自由への希求と、アイデンティティーの喪失から
生じる不安との葛藤のドラマを、著者のいわゆる
スピリチュアル・ジャーニーが象徴的に浮き彫り
にして見せているからにほかならない。そして、
このドラマは日本人の魂の中でもいまだに進行し
ている事態である。
 著者は現在、ソウル近郊の村に住んでいるが、
ビッグ・アイランド(ハワイ)の活火山の近くにも
自分を見つめるための拠点をもち、世界各地で踊
り続けている。(菅靖彦)

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